速く走ることだけが馬の人生なの?引退した競走馬のセカンドキャリアをサポートするリトレーニングの温かな風景

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「引退した後の競走馬は、行き先不明なことがほとんどなんです」

 

そう話すのは、NPO法人吉備高原サラブリトレーニング代表理事長の西崎純郎さん。
毎年7000頭ものサラブレットの卵たちが厳しい訓練を受け、競走馬(競馬に出走し、速さのみを競う馬)としての人生を歩みはじめる一方で、同時に5000頭もの競走馬が引退を余儀なくされています。
引退馬はその後、乗馬クラブへ行ければまだいいほう。中には食肉として殺処分され、行方をくらます馬も数多くいるといいます。

 

そんな競走馬の引退後のセカンドキャリアを支援するのが、吉備高原サラブリトレーニング。速く走ることを最大目的として育てられた競走馬に、ゆっくりと歩くことや、障害物を飛び越えることなどを教え、乗用馬や競技馬・セラピー馬として生きるセカンドキャリアを支援しています。

 

編集部が取材に訪れたのは夕方の5時頃。そこには障害物を軽々と飛び越えるリトレーニング中の馬が目につくほか、引退した競走馬を一目見ようと、観光客と見られる一般の人がちらほらといました。

F1マシーンから自家用車に。走ることがすべてじゃない生き方を教えるリトレーニング

(障害物を飛び越えたりゆっくり歩いたりといった、馬のトレーニングがここで行われている)

 

ーーリトレーニングとは、具体的にどんなものなのでしょうか?

 

西崎さん(以下 西崎):競走馬って、車で例えるとF1マシーンなんです。最大の目的は「速く走ること」。でも、引退後はゆっくり走ったり、人との関係性をより密にしたりしていく必要があるんです。「ここで曲がるんだよ」とか「ここで飛ぶんだよ」ってことを、人と馬が息を合わせてトレーニングしていく必要がある。もともとF1マシーンだった馬を、より小回りの利く自家用車のような馬に、サーキット用よりも街乗り用にしていく――というのがリトレーニングですね。

競走馬は心と体の強い馬を作るべく調教されているので、人がまたがると「さぁ、行くぞ」といった意気込みで、ただ速く走ることだけに意識が向いてしまうんです。気性が荒く「人の言うことなんて聞かないぞ」という気持ちの馬が速かったりします。人が「待って待って!」と言っても、それを押しのけてでも前に進みたいという意欲がないと、やはりレースでは勝てない、というかそう教えられてきてるんです。体にそれが染みついてるからこそ、ゆっくり歩くことすら最初はなかなか難しいんですよね。

リトレーニング後の豊かな人生

(リトレーニングを終え一休み。檻から顔を出し、夢中でエサを食べている愛くるしい表情)

 

ーーリトレーニングを経験した後の馬は、どういったセカンドキャリアを歩みはじめるのでしょうか?

 

西崎:私たちは、引退した競走馬だけのオークション(リトレーニングセール)を行っています。育てた馬は、すべてではないですがリトレーニングセールに出して、あくまでで公の場で値段を決定しています。要は、たくさんの人が見てる中で購買されていくということです。

 

リトレーニングセールで売れた馬の中には、去年の全日本障害馬術大会で5位に入賞した馬もいますし、愛媛県の菊間町というところでは「お供馬の走り込み」に出陣して、街の人に元気を与えている馬もいますね。

 

引退した競走馬が活躍できる場はたくさんありますし、行き先も多岐にわたるので、セカンドキャリアとしてはさまざまな選択肢が用意されています。

引退後のサラブレッドを支援する「サンクスホースプロジェクト」とは

 

ーー吉備高原サラブリトレーニングがプロジェクトパートナーを務めるサンクスホースプロジェクトについて教えていただけますか?

 

西崎:「競走馬が引退後どうしてるか」というのは、これまであまり注目されていませんでした。そうした「引退後の競走馬がどこへ行くのかを目に見える形ではっきりさせましょう」という目的で、取り組んでいるのがこのサンクスホースプロジェクトですね。

 

ーーサンクスホースプロジェクトに関わろうと思ったきっかけについて教えていただけますか?

 

西崎:2014年、僕が出場した全日本(障害馬術大会)で初めて優勝させてもらったときに乗った、ドリームハートという馬がきっかけでした。

ドリームハートは速く走ることを目的として育てられたサラブレッドだったのですが、すごく怖がりで……スタートラインにあるゲートに立てなかったんです。なのでゲート試験には不合格。一度も競走馬として出走できずに終わりました。

 

でもその怖がりっていう性格、言い換えれば慎重な性格というのは競技馬(速さではなく技術を競う馬)としてはすごく優秀なものなんです。障害物を飛び越える際に長所となって表れて、全日本では僕を乗せて優勝に導いてくれました。こういった競走馬以外の人生を切り開く馬を見て、引退後の競走馬にも何か恩返ししたいと思ったのが一番大きかったです。

 

また、僕がドリームハートに乗って優勝したとき、馬の生産者の方が本当に喜んでくれたのも大きな経験でした。「生きてるだけでうれしいのに、それがこんなにも活躍してくれるなんて……」と仰っていて。それを聞いて、引退した競走馬たちがもっともっと活躍して、人を喜ばせる存在になってほしいと感じました。

 

そのためには引退した後の馬を少しでも多く救えるシステムを作らなきゃいけないので、サンクスホースプロジェクトに携わることにしました。

オリジナルTシャツで国民性に合わせた寄付システムを設計

 

ーーちなみに1頭の馬をリトレーニングするとなったときに、どれぐらいの費用がかかるのでしょうか?

 

西崎:例えばですけど、馬専用の車で馬を輸送するとなると1頭で10万円ものお金がかかります。オス馬は去勢手術をする必要があるので、そこで数十万というお金がすぐにかかってしまいますね。それから毎月のエサ代・管理費用などが10万~15万/月。それが半年ぐらい続くとなると、自ずと1頭の馬をリトレーニングするのに100万円以上のお金がかかる計算になります。

 

ーーリトレーニング資金はどこから工面するのでしょうか?

 

西崎:今は、ふるさと納税の割合が大きいです。ふるさと納税だけで、去年は3800万、今年は3300万ぐらい集まりました。たまたま広島県で、犬の殺処分を0にする取り組みとして、ふるさと納税を利用している仕組みを発見して。これの馬バージョンをやろうということではじめたのがきっかけです。

 

だけど国民性なんですかね……ふるさと納税の仕組みを利用した寄付はすぐには集まりませんでした。理由を聞いてみると、どうもふるさと納税そのものをしぶる声があって。
でも募金箱を置くと、そこには何人もの人が快く寄付をしてくれるんです。それなら最初は国民性に合わせてチャリティグッズを販売して、その一部がリトレーニング費用になるという仕組みを導入しようと。そのチャリティグッズのひとつが、オリジナルTシャツでした。お子さまや女性も着やすいデザインにしています。

 

まずはTシャツのような気軽な寄付の入り口を作って、少しでも多くの人に引退した競走馬を支援する気持ちを感じて欲しいと思います。

人と同じように、馬にもそれぞれのキャリアがある

 

競馬場を颯爽と駆け抜け、人に感動と興奮を与えてくれる競走馬。

でもその役割は、速く走ることだけでは終わりません。

 

触れた人の心を癒したり、

速さではなく技術で人を魅了したり、

イベントを盛り上げてくれたり。

 

新たな門出を迎える馬の未来をそっと支える吉備高原リトレーニングには、今日も温かく美しい空気が流れていることでしょう。

世界でたった1つ。
あなただけのオリジナルTシャツとオリジナルタオルを作ろう。

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オリジナルTシャツ400円~ オリジナルタオル675円~

【取材協力】西崎純郎さん

NPO法人吉備高原サラブリトレーニング理事長

公益社団法人 日本馬術連盟A級ライダー、公益社団法人 全国乗馬倶楽部振興協会公認インストラクター、スペシャルオリンピックス日本認定馬術プログラムコーチ、岡山県馬術連盟理事などの資格を持ち、競技者・経営者として、現在の馬術界を担う一員として期待されている。2014年、自身が乗用馬としてトレーニングをした元競走馬で出場した全日本大会で、並み居る強豪や外国馬を抑え優勝。乗馬雑誌でもそのトレーニング法が連載されるなど注目を集めている。
URL: https://www.thoroughbret.org/

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