本業にしない・目標をもたない・好きなことしかしない。マニア業界のカリスマブランド「マニアパレル」のTシャツが支持される理由

昭和に建てられた団地の造形を愛してやまない人――

巨大なダムを見て興奮する人――

 

一般にはなかなか理解されないディープな世界には、熱狂的なファンが存在します。
そんなマニア界で絶大な支持を集めているのが、Tシャツやトートバッグ・ステッカーなどを制作・販売するブランド「マニアパレル」。ファンの間では「マニアパ」と呼ばれ親しまれています。

 

今回はマニアパレルをプロデュースする「BAD_ON」さんに、お話をうかがってきました。

 

“こじらせた偏愛”を認めてもらえる悦び

 

インタビューをさせていただいた場所は、東京都内某所にあるBAD_ONさんのご自宅。築50年を越える公社住宅で、外見はいかにも高度経済成長期に作られたという佇まいですが、内装は大胆に手が加えられています。
なんと部屋の真ん中に全面ガラス張りのお風呂が……。

 

もともと団地マニアだったBAD_ONさん。その熱量が風の噂で方々に伝わり、マニアにとってカリスマ的な人気を誇るテレビ番組「タモリ倶楽部」の団地特集に出演してタモリさんと共演したり、雑誌で自宅を紹介されたり、団地マニアが集まるトークイベントにゲストとして呼ばれたりと、注目されるようになりました。
BAD_ONさんは自身が愛情を注ぐものの魅力についてこう語ります。

 

「団地やダム、マンホールなど、インフラとして行政がつくったものが好きなんですよね。余計な装飾が一切なく、機能性だけを追求した色気のない感じ……ある意味“禁欲的”な感じがたまらなくクールで、同時に愛おしく思えるんです。」

 

そんなBAD_ONさんがマニアパレルを始めることになった最初のキッカケは、とある方からの依頼だったそうです。

 

「もう10年以上も前ですが、ダムマニアの方がダムを巡るバスツアーを企画していて。私も参加を申し込んでいました。ツアーに向けて、遊び心でダムをイメージしたロゴマークを作って自分のmixiで勝手に発表していたら、ダムマニアの関係者の方がそれを見て興味をもってくださったんです。そして、『ダムのDVDの発売イベントであなたのデザインしたロゴをステッカーとして配りたい』と頼まれました。
私が勝手に作ったものに対して熱心なファンの皆さんがどんな反応を示すのか不安でしたが、実際にイベント当日ステッカーが配られると、予想以上に喜んでもらえて、かなりの反響がありました。
このとき、自分が“こじらせてしまった”マニアックな偏愛をこれほどまでに認めてもらえる世界があるんだなと、心の底から喜びが溢れるのを感じました。

 

そこから少しずつ、自分が好きなものをデザインに落とし込んでTシャツやトートバックとして発表していくようになりました。」

 

 

飾りたてず、本来の魅力が伝わればいい

 

デザインを通して人の共感を得られる喜びを知ってから現在に至るまで、不定期ですが精力的にオリジナルTシャツを発表してきたBAD_ONさん。モチーフはダムやマンホール、消波ブロック(テトラ)、送電鉄塔、三角コーンなどなど……どれもBAD_ONさんが愛するものばかり。無機質な建造物や機器などをTシャツデザインで表現するうえで、BAD_ONさんは独自のこだわりを持っています。

 

「華やかに飾り立てたりしたくない。できるだけ“デザイン”せず、そのものの質感や雰囲気がそのまま伝わるのが理想です。」

 

 

嬉しいことにマニアパレルを支持してくれる人の中には、建造物などを愛するマニアの他に、それらを“作る側の人”も意外と多くいます。これまでにも、ダムを建設している企業の人や、一昔前まで全国のドライブインに設置されていた『うどんそば』自販機の中身を作る企業の人と繋がり、Tシャツを作らせていただきました。ある日突然メールでダムの図面や自販機のデザインデータが送られてきたりして……もうそれだけでかなり興奮します。(笑)
許可を得たうえで正式なデータをいただけた場合、余計なデザインは加えません。丸裸のそのままが、マニアにとってはベストな状態なんです。」

 

 

 

 

 

Tシャツは「仲間発見装置」

 

ニッチなテーマでマニア心をくすぐり続ける「マニアパレル」のTシャツ。“一般受け”とは離れたコンセプトだからこそ、BAD_ONさんはTシャツが少数派の仲間たちを繋ぐツールになると考えています。

 

「マニアな人たちにとって、共通の話題で話せる人ってすごく貴重な存在で、出会えると本当に嬉しいんですよね。マニアパレルのTシャツが『仲間発見装置』として、街中でもマニア同士を繋いでくれると嬉しいです。」

 

そして、最後に「今後の展望」をお聞きしましたが……。

 

「今後の展望……ないです!これからも自分が本当に好きなものだけを、デザインしたいと思ったタイミングでTシャツにしていきます。たまに『もっとTシャツを作って欲しい』という嬉しい言葉もいただきますが、マニアパレルは私の本業ではないし、これからもあくまで趣味です。だからこそ気持ちの赴くままに、こじらせた偏愛ぶりをTシャツに乗せて表現していきたいと思います。

 

マニアパレルのTシャツとBAD_ONさんのお話を通して、マニアックな世界の奥深い魅力をほんの少しだけ感じることができた気がしました。「今後の展望はないです!」と言い切る姿勢もまた、コアなファンから支持され続けている理由なのかもしれません。

 

 

Interview & Writing & Photo:下條信吾(KaRaLi・Tropicos)

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【取材協力】 マニアパレル

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