
フロッキープリント【加工方法徹底解説】
フロッキープリントは、生地に接着剤(バインダー)を塗り、短い繊維(フロック)を垂直に植毛してベルベットのような起毛面を作る加工です。
マットで立体的な質感が得られ、見た目に高級感があります。
特徴・仕上がり
工程は大きく分けて「接着剤塗布(スクリーン等)→フロック付着(静電植毛またはシート貼付)→余分フロック除去→乾燥(焼成・キュア)」です。
フロックはレーヨン・ナイロン・ポリエステル等の短繊維で長さは概ね0.25〜5mm(用途で変動)とされ、繊維径や長さで柔らかさや毛並みが変わります。
静電気で垂直に整列させる「静電植毛」が一般的で、仕上がりは反射が少ないマットなベルベット調。
細線や網点など微細表現は不得手で、毛足の長さや接着剤の特性で耐久性や風合いが左右されます。
メリット・デメリット
■メリット
・独特の高級感・手触り
ベルベットやビロードのような起毛感で視覚的・触覚的な差別化ができる。
・立体感のある表現
平滑なプリントとは異なる“浮き上がる”表現が可能で、ワンポイントやブランドロゴに適する。
・色や素材のバリエーション
フロック素材や毛足長さ、色の選択で表情を変えられる。
■デメリット
・摩耗・抜け落ち
繊維が摩擦で抜けやすく、洗濯や強い擦れで毛羽が取れやすい。接着剤(バインダー)の品質が耐久性を大きく左右する。
・細かい表現が苦手
線幅や点はある程度の太さ(例:線・点ともに3mm程度を目安)を確保する必要があり、写真表現には不向き。
・細部表現に不向き
網点や微細表現は潰れやすく、輪郭が丸くなるためシャープさが落ちる。
・コスト・工程負荷
接着→植毛→乾燥と工程が増え、フロック素材自体のコストも加わるため単価はやや高め。
おすすめの用途
ブランドロゴのワンポイント、限定コレクションの高級感演出、ワッペン/パッチ、アパレルのアクセント使い(スリーブや胸元)など、触感と見た目の差別化を重視する用途に最適です。
FAQ
Q1. フロッキープリントは洗濯しても大丈夫ですか?
適切なバインダーとキュア処理で日常洗濯に耐えることは多いですが、摩擦・乾燥機・漂白は抜けや劣化を早めます。ネット洗いや手洗いがおすすめです。
Q2. どんなフロック素材があるの?
レーヨン・ナイロン・ポリエステル等が一般的で、毛足長さや繊維径でソフト感や耐久性が変わります。
Q3. デザインで気をつけることは?
細線や小さいドットは避け、最低でも線・点ともに数ミリ以上を確保する。角は丸めるなどウィーディング性(フロック付着の安定)を考慮してください。
Q4. 静電植毛とシート貼付の違いは?
静電植毛はフロックを垂直に整列させて接着する方式で高級な毛並みが得やすいです。シート貼付はあらかじめ作ったフロッキーシートを貼る方法で工程が簡便な場合があります。
歴史
フロッキー(植毛)は古くは産業用・インテリア用途などで使われ、20世紀にかけて繊維・工業の発達とともに発展しました。
衣料分野ではスクリーン印刷技術と接着剤・静電植毛技術の進化で応用が広がり、アパレル業界では高級感や立体表現を狙った特殊プリントとして定着しました。
近年は微調整された短繊維や色フロックのオーダー、ヴィンテージ風の“クラッシュ”表現など表現バリエーションが拡大しています。