
刺繍【加工方法徹底解説】
刺繍加工は糸を生地に縫い込んで図柄を表現する加工方法で、立体感と高級感、優れた耐久性が特徴です。
ロゴ・ネーム・ワッペンなどに多用され、長期間の着用や洗濯にも強い仕上がりになります。
特徴・仕上がり
刺繍は「針と糸で描く」表現で、サテン縫い(線やフチを揃える)、タタミ縫い(面を埋める)、ランニング/バックステッチ(線表現)などのステッチを組み合わせて仕上げます。
業務用の多針刺繍ミシンで高速に均一な縫いが可能になり、刺繍データ化によって縫い順・針運び・密度が細かく制御されます。糸の種類(レーヨン糸・ポリエステル糸・メタリック糸など)や裏打ち(カットアウェイ/ティアアウェイ/水溶性スタビライザー)を選ぶことで光沢感・耐久性・生地の歪み具合を調整できます。
立体的で高級感のある仕上がりが得られる一方、面積が大きいデザインや極細の線・写真の再現には向かない点に注意が必要です。
メリット・デメリット
■メリット
・耐久性が高い
糸で縫い込むため、洗濯や摩擦に強く長持ちします。ユニフォームやワークウェアに適します。
・高級感・立体感
糸の光沢や盛り上がりで高級感を出せ、ブランドロゴなどに向きます。
・触感と風合いの差別化
糸の種類や密度でマット〜光沢、やわらか〜しっかりした質感を作れます。
■デメリット
・細かい表現や写真は苦手
糸の太さやステッチ構造上、写真や極細線・微小文字の再現は難しく、別表現が必要です。最小文字や線幅には制約があります(目安は英数字で3〜5mm、日本語はもう少し大きめ推奨)。
・面積が大きいとコスト急増
刺繍は縫う密度=工数に直結するため、広面積(全面刺繍など)はコストと工程が大幅に増えます。
・生地の歪みや裏処理が必要
ニットや薄手生地では伸びや歪みが出やすく、スタビライザー(裏打ち)選定と枠入れが重要です。
おすすめの用途
ロゴ・ネーム入れ、ポロシャツやキャップのワンポイント、ワッペン(記章)やユニフォーム、記念品・ギフトなど、耐久性と高級感が求められる用途に最適です。
小〜中ロットのブランディング用途に特に強みがあります。
FAQ
Q1. 洗濯で刺繍は取れますか?
適切な糸・裏打ち・縫い密度で仕上げれば、通常の洗濯でほつれにくく長持ちします。ただし極端な力や漂白は避けてください。
Q2. どれくらい小さな文字が刺繍できますか?
使用する糸・生地・フォントで変わりますが、英数字で概ね3〜5mm程度(推奨は5mm以上)、日本語は画数のため8〜10mm以上を目安にしてください。
Q3. 写真は刺繍できますか?
写真のような微細なグラデーション表現は刺繍では苦手です。細かい写真表現を出したい場合は、プリント(DTG/DTF等)と組み合わせることもあります。
Q4. どんな糸を選べばいい?
耐久性重視ならポリエステル糸、光沢・高級感ならレーヨン糸。金銀の金属風糸やメタリック糸もアクセントに使えます。
Q5. 速く/安く作りたいときのコツは?
面積を小さくする、色数を絞る、既製のワッペン化(量産向け)でコスト圧縮が可能です。またデジタイズ段階で最適化(ランニングステッチ多用等)すると縫い時間が減ります。
歴史
刺繍自体の起源は古く、東アジアでは仏教伝来とともに技術が伝播しており、日本でも古代〜中世にかけて祭礼衣装や仏装に使われて発展しました。
産業化では19世紀にチェーンステッチやシュフィーリなどの機械刺繍が登場し、20世紀に入って自動化・多針機の発達で商業刺繍が大規模生産に対応するようになりました。
近年はパソコンで刺繍データを作るデジタイジングが主流になり、多針ミシンとソフトの組合せで高精度・短納期の刺繍生産が可能になっています。