Tシャツに希望を込めて。アマチュアから世界を目指す選手を救うMMA大会

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日々練習に励んでいるが、著名な団体の試合には出られない――。そんな中間層選手たちが参戦する総合格闘技「ファインティング ネクサス」。「夢の舞台である試合会場で戦いたい、と願い懸命に頑張る選手たちを応援する」というコンセプトで2014年9月28日から始まり、2017年12月3日に第11回目を迎えました。

 

ブルーのライトと黒を基調にした試合会場をさらにスタイリッシュに演出しているのは、運営側が着用しているスタッフTシャツ。胸と背中のデザインには、主催者である山田さんの熱い想いが込められています。

もともとは空手選手。総合格闘技(MMA)に魅せられ、好きが高じて試合を開催

―― サイトを拝見し、実際の試合も観戦しましたが、チャンスに恵まれない選手に夢の舞台を提供したいという想いが強いと感じました。山田さん自身も選手だったのですか?

 

選手ではなかったのですが、社会人になってからMMAを習っていました。もともと空手の選手でしたが、怪我をして選手を断念したんです。また、ちょうどPRIDEが盛り上がっていた時代で、そうそうたる選手の試合を見て惹きつけられて。それからですね、MMAを始めたのは。

 

―― では、開催側にまわったきっかけがあったのですか?

 

道場に通っていたとき、他団体の関係者の方に「うちの試合でスタッフのバイトをしないか?」と誘われたんです。ちょうど丸3年くらいバイトした頃に「もしかしたら自分でも開催できるんじゃないか?」と考えるようになって。

 

それで現在よりも小さい規模で開催してみたんです。大変でしたが、選手の皆さんにも喜んでいただけたので「じゃあ続けてみようか」と。

 

―― 続けてみようという気持ちがあっても、運営するのは大変なことが多いと思いますが……

 

格闘技業界の先輩たちが口を揃えて「大会は赤字覚悟でやらないと難しいから、本業を辞めるんじゃないぞ」とアドバイスしてくれたんです。だから、本業を続けながらネクサスを立ち上げました。現在も別会社を経営していまして、ネクサスで赤字でも自分の生活はギリギリ何とかなるようにしています。

 

MMAが頻繁にテレビ放映されなくなったこともあり、人気が以前に比べ落ちて集客に苦戦することもありますが、選手人口は増加しているんですよ。

「ネクサス」は次のステージに行くための場所。多くの選手を輩出したい

―― 裾野が広がっていることは業界にとっては良いことのように思います。

 

ただ、課題もあって。一定レベル以上のプロが出場できる試合を開催する団体は全国に数多くありますが、そうした大会に出場できる選手は一握りなんです。「実力がそこまで到達していない」と言ってしまえばそれまでですが、上に這い上がりたくても這い上がるチャンスさえ少ないのが現状です。ボクシングのようにプロ試験制度もなく、ステップアップする機会が圧倒的に少ない。

 

こうした状況を考え、ネクサスの立ち位置を「アマチュアとトッププロの間の選手たちが、上に行くためのチャンスの場」と決めました。

 

―― そういうお考えのもと、「ネクサス」と名付けられたんでしょうか?

 

ネクサスという言葉には「きずな・つながり・連鎖」といった意味があります。試合を開催することで、人と人、そして選手のキャリアが次につながり、良い連鎖が起きてくれればいいな、と。

 

―― 今回、出場されていた選手の中には、選手としては高齢の方もいらっしゃったようですね。

 

今回の最高齢は50代ですね。40代からMMAを始めて、今回アマチュアとして参戦してくれています。仕事のかたわら練習に励んで減量したり身体を作ったりして、観ているこちらの頭が下がります。

 

また、もともとプロとして試合に出場していた40代後半の方は、選手としての全盛期を過ぎたものの、経験値が豊富で技も確かなものを持っているため、若い選手たちのレベルアップのための相手になってほしいと、こちらからオファーしました。

 

どの選手も、本当に格闘技が好きなんですよ。でも、プロを名乗ってもそれだけでは生計を立てられず、バイトをしながら週に4、5回以上練習してMMAを中心に生活している。選手たちが懸命に努力している姿を見ると「赤字が続いたとしても、なんとしてもネクサスを続けていかなくては!」と気持ちが引き締まりますね。よく周りの人に「いつまで続けるの?」と聞かれますが、「とにかく40歳までは続けたいから見守っていてください」と答えています(笑)

目指すは世界規模のイベント!Tシャツに熱い想いと希望をデザイン

―― ところで、ネクサスのオリジナルTシャツは、会場で拝見するとそのカッコ良さが際立ちますね!会場のクールな雰囲気や熱気と相まって、場を盛り上げている印象でした。

 

ありがとうございます。デザインを決めるとき、たくさん考え過ぎて最後には何がネクサスらしいのかわからなくなって(苦笑)。だから、こちらの想いをデザイナーさんに伝え、あとはお任せしました。デザイナーさんにお任せするまで散々迷ったので、「カッコ良い」と言ってもらえると嬉しいですね。

 

―― デザイナーさんにはどのような想いを伝えられたのですか?

 

ネクサスが、世界規模、地球規模にまで広がって、選手たちの次のステージにつながる場所になるように、という壮大な夢を話しました。だから、胸には地球、背中には世界地図をデザインしています。この世界地図も、日本でよく見る日本が中心の地図ではなくて、あえて海外のスタンダード、つまり日本が端っこにある地図にしてあるんですよ。日本にこだわらず広がるように、と。

 

―― レフェリーとドクターの背中に書かれている「REFEREE」「DOCTOR」の文字も「カッコ良いなぁ」と会場で見ていました。

 

背中の文字もそうですが、レフェリー、ドクター、スタッフのTシャツを別々の色にしているのは、ひしめき合う会場で一目瞭然にしたかったからなんですね。レフェリーは黒、ドクターは白、スタッフは青の生地にして、背中の上部に英語で役職を入れることで、関係者同士にわかりやすいし、選手も観客もすぐに見分けられます。

 

―― 確かに試合会場でわかりやすかったです。その他にもグッズを作っていらっしゃるのですか?

 

キャップや、協賛の企業さんとのコラボTシャツも作ったりしています。コラボTシャツは、前面に企業さんのロゴを入れています。それから、選手に販売するTシャツもありますよ。出場記念に購入してくれる選手も多数いますが、選手が買ってくれると、やはり感慨がありますね。

 

―― 山田さんにとってMMAの魅力とはどのようなところでしょうか?

 

実は、はっきりとした答えを持っていないんですよ。気がついたら好きだったし、魅了されていたというか。

 

主催者としての醍醐味のひとつは、予測不可能なことが起きることでしょうか。対戦カードは、選手たちの戦歴などを考え分析して私が組みますが、周囲が「勝つ」と予測していた選手が負けたりもして、本当に何が起きるのかわからない。その予測不可能さがたまらなくおもしろいですし、もっともっと自分自身のディレクションスキルを上げていきたいとも思います。

 

また、選手自身を知っていただくと試合のおもしろみがグッと増すので、選手ひとりひとりのキャラクターを多様な媒体で拡散していきたいですね。

誇りを胸にスタッフTシャツを着用し、MMAイベントを支える

試合会場でTシャツの写真撮影をしましたが、突然の依頼にも快く対応してくださったレフェリー。ところが、試合が始まるや表情が一変し、真剣な眼差しと張り詰めた緊張感を醸し出していました。そこには、自分のすべてをかけて試合に臨む選手たちへの敬意が払われているようでした。

 

レフェリーと同じように、ドクターもスタッフも「選手たちとネクサスの試合を支えている」という誇りを胸に、スタッフTシャツを身に付けているのでしょう。

 

Interviewer&Writer:佐藤美の

【取材協力】山田峻平さん

総合格闘技ファインティング ネクサス主催者

学生時代は空手の選手としてハードな練習を重ねていたが、足を怪我して選手を断念。社会人になって総合格闘技と出会い、趣味としてジムで習うようになる。その後、他団体の試合開催者やプロ選手達とのつながりを持ち、試合スタッフとしてアルバイトしたことがきっかけで自ら試合を主催。2015年から、本格的に総合格闘技の試合開催を事業として取り組んでいる。 ■HP:http://fighting-nexus.net/

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