川上博之さん

ブタ助の想いを胸に。ポロシャツで団結するドッグトレーナーたち

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はるか昔から、私たちの友だちである犬。かつて人は、牧羊や狩りをして生きるために犬とともに暮らしていました。今や、さまざまなかたちで犬との生活を楽しむ人が増えてきています。

 

そんな中、犬と人が息を合わせる「ドッグスポーツ」も徐々に普及しています。ドッグスポーツは、競技に目が行きがちですが、犬と人がともに信頼し合い喜びを分かち合うための手段のひとつ。

 

今回、ディスクドッグ世界大会第4位に輝き、千葉のドッグスポーツクラブ「ロータス ルート ドッグス(以下ロータス)」の代表を務める川上博之さんに、ドッグスポーツや犬と人の素敵な生き方、今は亡き愛犬をモチーフにしたクラブポロシャツにまつわるエピソードについてお聞きしました。

「犬と思いっきり真剣に楽しもう!」。それがロータスのコンセプト

川上博之さん

―― まず、ドッグスポーツについて教えてください。

 

ドッグスポーツは「犬と人がスポーツを通して楽しむ」をコンセプトにできたもので、その中に競技(大会)が含まれます。ちなみにロータスでは、フリスビーを使う「ディスクドッグ」をメインに何種類かのドッグスポーツを教えています。

 

―― ロータスの具体的な活動はどのようなものですか?

 

ロータスは、犬やドッグスポーツに同じ価値観を持った人が集まっているクラブです。活動としては、フィールド(ロータス専用練習場)で練習し、競技大会に出場したり、ドッグランなどでのドッグショーを行ったりしています。

ドッグスポーツ

それ以外には、合宿や各種イベントなど、犬と人の充実した生活を深める機会を作っていますよ。発足の目的は「犬と人との関わりの素晴らしさを広めたい」「犬の本当の生き方、姿をもっと知ってもらおうよ」というものだったんです。

 

―― 現在は目的が違ってきているのですか?

 

いつの間にか僕自身が「広めなくちゃいけない」「技術を教えなきゃいけない」という義務感や責任感が強くなりすぎて、息苦しくなってしまったんです。普及や教えることに力を注ぎ込みすぎて、犬と一緒に楽しむ余力がなくなってしまって、これはおかしいと思い悩みました。

 

そのため、メンバーに自分の正直な思いを話したんです。「教えることも普及も大事だけど、まずは自分が楽しくありたい。自分自身に純粋でありたい」と。それからですね、肩の荷を下ろしてドッグスポーツと向き合えるようになったのは。

 

―― みなさんの反応はいかがでしたか?

 

話す前は怖かったですよ。もっと上手くなるために僕から学びたいはずだから、今ここで力を抜くと拒否されるんじゃないかって。ですが、みんな「かわさん(ニックネーム)とともに時間を過ごすことが自分たちの幸せだから、ぜひそうしてほしい」と言ってくれました。そうしたら不思議なことに、どんどん人が集まってきて、現在25人になりました。

犬は人の感情を読み、人の心に繊細に寄りそう愛にあふれた生き物

犬は人間のパートナー

―― 先ほど「同じ価値観を持った人が集まっているクラブ」と仰いましたが、そこを詳しく教えていただけますか?

 

その価値観は「犬に真剣に向き合って愛情を注ぐ生き方」です。僕にとっては、小さい頃から犬はパートナー。何かあっても、犬と一緒に森を散歩するとスーッと嫌な気持ちが抜けていくのが当たり前で、ずっと犬に助けられて来ました。

 

今の日本の犬に対する価値観って、色々あってそれはそれで良いんですが、単なるペットとか飼い主の孤独を癒すだけの存在だとしたら、それは寂しいと僕は思うんです。犬は人の心をとても敏感に読みます。犬によっては、飼い主が落ち込んでいると心配するあまり苦しみ、自分のことは置いて人に寄り添ったりする。これってすべて犬の愛なんです。

 

―― 犬の繊細さが想像以上で、そこまで人のことを思いやっているとは驚きです。

 

犬も感情があって、怒ったり、ふてくされたり、落ち込んだりして、人間と同じなんです。だけど、そういうこと飼い主さんも知らないことが多くて。

 

よく「犬を褒めてあげましょう」と言いますが、僕は上から目線で犬に失礼だと思っているんです。犬って、たとえ人間の言葉が聞こえなくても、そこに乗っかってる思いのエネルギーを受け取るんですよ。いくら褒め言葉を言っても、それが本意でなければ見透かされてしまう。だから、かわいい!とか、よくやった!とか、私たちの感情をそのまま見せてあげることが彼らのご褒美になります。

ブタ助が生き方を教えてくれた。想いを刻んだポロシャツデザイン

オリジナルTシャツ

―― ロータスのポロシャツを作ったきっかけは何だったのですか?

 

クラブができてみんなで話をしているとき「せっかくだから自分たちのオリジナルポロシャツが欲しいよね!」とすぐになりました。もう単純というか、ごく自然にですね(笑)。

 

―― デザインもみなさんで決めたのですか?

 

そうです。このデザインの犬はフレンチブルドックで「ブタ助」という耳の聞こえない犬がモデルなんです。僕は動物の専門学校を卒業して「那須どうぶつ王国」に就職し、犬チームに配属されました。ブタ助はそこでボールを咥えるショーをやっていて、僕が出会った頃は、ボールを見ると豹変して追いかけるようなボールジャンキーになっていました。

 

あるとき、ボールが視界に入ったブタ助は突然走り出し、あやうく車に轢かれそうになったんです。「ボールジャンキーを治さないと危ない」と真剣に思い始め、それから毎日、泥臭く本気で向き合いました。そうしたら、ボールジャンキーは治ったんです。この体験で、言葉が通じなくても心は通じるんだと気づきました。

 

このポロシャツは、このことを忘れないようにブタ助をモチーフにしています。「ロータス ルート ドッグス」って「レンコン犬」ってことなんですが、「根菜のレンコンのごとく犬と泥臭く付き合おう!」という意味が込められています。

 

―― ブタ助は川上さんにとって特別な存在だったようですね。

 

「那須どうぶつ王国」を辞めたとき、ブタ助を引き取り一緒に生活していましたが、犬という生き物の姿を教えてもらいました。心の強い犬で、僕が落ち込んでいると、良い意味でこちらを睨みつけ「で、お前はどうしたいんだ?」と全身で伝えてくるんです。

 

最期は右前脚の骨にガンが見つかり、どこまで転移しているか定かでない状態でした。痛みが強かったようで僕が仕事で家にいない間は絶えず鳴き叫んでいるのに、僕が帰宅するといつもの凛とした態度でいるんです。絶対に鳴かない。最期まで自分に生きることの強さを見せ、大切なことを伝え続けてくれました。

オリジナルTシャツ

―― ブタ助は何を伝えてくれたのですか?

 

「犬という生き物の“まっすぐさ”を人に伝えるんだよ」と自分に託してくれたんだと思います。犬を人のエゴに合わせるんじゃない、犬はこういう生き物なんだと伝えること、それがお前ならできると、ブタ助は信じ続けてくれた。「だからお前もまっすぐでいろ!」と伝えてくれたと思っています。

 

―― 強い犬ですね。

 

強い犬でした。それもブタ助の愛です。僕の可能性をずっと信じてくれていました。今でも一緒にいる感じがしていますし、迷ったとき、ブタ助だったらどうするかな、と考えます。

 

―― まるで人生の師みたいですね。

 

まさにそうですね。犬はパートナーであり、友だちであり、お師匠さまだったり……人生を一緒に生き抜く不思議な存在です。「犬って何?」と聞かれたら「わからない」と答えますね。

 

―― このポロシャツを着ると、どのような気持ちになりますか?

 

やっぱり大切ですよ。練習では背中に犬を乗せたりするため、ポロシャツが傷んでしまうから着ません。ショーや大会のとき、それからメンバーと気持ちをひとつにしたいときに着るようにしています。

 

去年、これを着て写真に残したいね、となって合宿時に写真家の土田凌君に撮影してもらいました。これを着ると魂が乗るっていうんでしょうか。スッと一本筋が通るような気持ちになりますし、犬と素敵な人生を送ろう!という気になりますね。

忘れたくない大切な想いを閉じ込めたポロシャツは「人生の羅針盤」

スポーツドッグクラブ「Lotus Root Dogs」

ポロシャツのデザインの話を語り始めると、そっと胸の「レンコン犬」を撫でるようにした川上さん。まるで大切な宝物を扱うようなしぐさから、ポロシャツが単なる衣服ではなく、「人生の羅針盤」のような存在なのではないか、と感じられました。その想いはメンバーのみなさんにも伝わり、同じポロシャツを纏うことでさらに心をひとつにしているような印象を受けました。

 

フィールドで見学したドッグスポーツの練習では、川上さんを見る犬のまっすぐな瞳、練習後の満足げな表情、すべてに釘付けに。今回の取材で、「犬と人」も「人と人」との関係と何ら変わらないと実感しました。理解し、信頼しあうこと。そして相手を思いやる心と態度を持ち続けることが、互いの人生を豊かにすると教えてもらったような気がします。

 

Interviewer&Writer:佐藤美の
Photographer:土田凌

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川上博之さん

【取材協力】川上博之さん

ポーツドッグクラブ「Lotus Root Dogs」代表

幼少の頃より犬と自然とともに生きる環境で過ごす。動物の専門学校卒業後、那須どうぶつ王国に就職。犬チーム配属、ドッグトレーニングやショーを担当。その後、ドッグトレーニングを提供する「More About Dogs」を立ち上げる。その傍ら、国際動物専門学校にてドッグトレーニング実習、ドッグスポーツ実習講師を務める。DOGS IN MOTION(犬のリハビリテーション)Physiotherapy for theCanine Industry Course修了。USDDN2014(ディスクドッグ世界大会)4位受賞。

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